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敗者のゲーム

 「投資で一番大切な20の教え」で紹介されていたチャールズ・エリス著の「敗者のゲーム」を読みました。書籍を介した最適な勉強方法は、参考文献を辿りながら、自分なりに書いてある事柄を消化していくことだと思っています。

敗者のゲーム―金融危機を超えて<原著第5版>

敗者のゲーム―金融危機を超えて<原著第5版>

 著者のチャールズ・エリスは世界最大級の投資信託運用会社バンガード・グループの社外取締役です。以前は、イェール大学財団基金の投資委員会のメンバーとして、1992年に参加し30億ドル弱から、16年後に財団の資金は230億ドルまで拡大した実績があります。

 読みながら、気になる箇所にマーカー引いたら結構な数になりました。特に、参考になった箇所を抜き出してみました。

投資するよりもまず節約し貯蓄するのが先決

貯蓄の秘訣は、その年の支出額を前年の収入の範囲内に抑えることだ。

貯蓄の第一の目的ーーー消火器のようにーーー問題が発生した場合の助けとなるように、防衛的な準備をすることにするにある。

 勘違いしていけない。どんだけ投資で儲けたとしても、「フローの貯蓄 < 浪費」の方程式になることは許されない。個人投資家への第一歩は、毎日の収支と毎月の資産(負債と資本)状況を把握しコントロールすることなのである。

あなた自身の資産・負債の目標を理解し、あなたにとって何が本当の成功なのかを確認することだ。

 毎月、資産が増える状況を創り出せたら、投資を行なって見てみたい未来を思い描く必要がある。

年に一度、時間をかけて自らの長期運用目的、財産状況、支払い責任、目標と比較した運用実績などを検討することで、投資の目標達成に一歩近づく。

 勘違いしてはいけないが、一度に完璧なプランを立てられるわけではない。定期的に見直しをかけて現実に合わせていくことが大事だ。

個人投資家のための十戒

  1. 貯蓄すること。そして貯蓄したものを、将来の幸せと安定、子供の教育のために投資をすること。
  2. 相場の先行きに賭けてはいけない。もしあなたが衝動に駆られ、どうしても相場を見ながら売買しようというなら、あなたはプロを相手にしていることを自覚すべきだ。投資額を、ラスベガスでプロとギャンブルする場合の金額程度に抑えたほうがよい(勝負の結果を正確に記録していけば、あなたもすぐに降りたくなるだろう!)。
  3. 税務上有利という理由で動いてはいけない。そうした商品は投資対象としては魅力はない。企業の税務上の損金を節税目的で商品化したものは、証券会社の手数料を増やすだけだ。ただ例外もある。自分の経済状況と、めまぐるしく変わる税制に見合った不動産投資管理計画を作成し、常にアップデートしておくこと。また、何らかの理由でとにかく株を手放さなければならない時に、低い簿価の特定寄付を行う場合。それと、条件に合うなら、IRAを開設し、401プランに毎年最大限拠出することである。401口座以外に資産がある場合は全体としての整合性を考えたほうがよい。
  4. 自分の住宅を投資資産と考えてはいけない。住宅価格の暴落過程でこのことを経験しただろう。住宅は金融的な意味で優良な投資対象とは言えない。しかし、家族の幸福のための投資としては意味がある。2007年末までの30年間、つまり大暴落以前には、平均的な住宅価格は年率5.5%で上昇した。ただこの中身を見ると、4.1%はインフレによるものである。さらに、税金、損害保険、通常の修理などのコストは3%かかっている。2008年の暴落以前においてすら、住宅への投資は割に合わない。
  5. 商品取引は考えものである。過去10年間、アメリカで1000人の顧客に商品取引の助言をしてきた業者の実績についてのレポートがある。それによれば、何人儲けただろうか?一人もいない。しかし、業者は手数料をもらって儲けている。実際、多くのコモディエィ商品価格は、今世紀初めの数年間上昇した後、2008年に暴落した。コモディティ取引は、価格変動の投機にすぎない。経済的付加価値を生まない以上、投資とは言えない。
  6. 証券会社の担当の人に気をつけなさい。多くの場合、素晴らしい人たちである。しかし、彼らの仕事はあなたを儲けさせることではなく、あなたから儲けることなのだ。もちろん、とても良心的で長年、担当してきた顧客の身になって、質の高い仕事をしてきた人も少なくない。ただ、あなたの担当の人がそうとは限らない。立派な担当者もいるが、なかなかそこまで手が回らないのが実情である。一般に一人の証券会社の営業担当は、資産残高の合計が500万ドル程度の約200人の顧客を抱えていると言われる。彼が年間10万ドル稼ぐためには、売買手数料収入として30万ドルを必要とする。これは、彼の顧客の資産合計の6%にあたる。これだけの額の手数料を生み出すためには、彼は投資家にとって何が必要かを考える暇はない。資金を回転し続けなければならないーーーそれはあなたの資金である。
  7. いわゆる新金融商品に投資してはならない。この手の商品のほとんどは、投資家に保有されるためというより、投資家に売るために設計されている。新商品に関して、他の投資家の話にも耳を傾けてはならない(ある新米の漁師が、魚がカラフルなルアーに食いついくのを感心して眺めていたら、その時、釣り道具屋はこう言ったという。「魚にはそのルアーは売らないよ」)。
  8. 元本、利息が安全だとか、リスクが少ないという理由だけで、債券に投資してはいけない。債券価格もほとんど株式と同様に変動するし、さらに債券は、長期運用にとって真のリスクであるインフレに弱い。
  9. 長期の投資目的と投資方針、資産計画を文書にして書き出し、それに沿って行動すること。最低10年に一度、できれば毎年それを見直すこと。
  10. 直感を信じて投資してはいけない。うまくいって有頂天の時は、大火傷が待っていると思ったほうがよい。落ち込んだ時は、夜明け前が一番暗いということを思い出そう。そして、何もしないことだ。売買は運用のプラスアルファの部分にすぎない。

 アメリカの制度をもとに書かれているため、日本では当てはまらない部分もありますが、基本的な考え方の指針としてはとても参考になります。