ネットのライオン

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取材以前

素材とテーマを決定するルポライターの2つのタイプ

 沢木耕太郎は、素材とテーマを決めるにあたって、2つの視点があると言っている。

  1. ジャーナリズムの要請といった外発的な要因によって決定する
  2. 自身の興味と関心、つまり内発的な動機の有無によって決定する

 彼はどちらが悪いとも言えず、単に好みの問題と考えている。

 

ルポライターとは?

 彼はペンを握る前に意識的に視る(取材する)ことを必要とする人間としている。

 

取材は誰でも容易に学ぶことができるが、重要なのは取材以前

 可能な限り外的な要因に左右されない立場を維持しようとするなら、彼は何を「取材」するかを自分自身で決定しなくてはならない。最も大事なことは「取材」そのものではなく、「取材以前」ということになる。

 (省略)

 何を「取材」するか。それこそがある意味で彼の個性であり、存在そのものの表現でもあるからだ。

 どのようなネタを書くか、彼は教えるに教えられるず、学ぶに学べない部分と言いルポライターの個性であり、存在そのものの表現と語っている。

 

あなたはルポのネタをどうやって見つけるのか?

 彼はネタは見つけたり求めたりするものでなく、ひっかかるという形で自身の内部の奥深くに巣食っている何かと表現している。

 彼は相場師の板崎喜内人のエピソードを紹介しつつ「ひっかかり」について分かりやすく説明している。板崎は一般紙の経済欄に出ていた豆記事に書かれたオーストラリアでは羊がどんどんつぶされているというニュースだけで、3億円を投入した。

 常人には理解できない気違いにしか見えないが、自分の中の「ひっかかり」に執着し、こだわり続けることで大きな利益をあげることができた。

 また、「ひっかかり」を見つけたとしてもすぐに行動を起こす必要はなく、ボルテージが貯まるまで寝かせておけば良いとも彼は言っている。

 

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 示唆に富む言葉があふれている章だった。編集や企画の立場でいると多くの案を用意し、ストックしておく必要がある。しかし、10件の企画案を出したとしても、1件も採用されない場合もある。わたしという個性を他人にみせるためにも、絶対に行う企画を1件提出し、その企画にこだわり続けることが良いのかもしれない。

 数打てば当たるではなく、狙いをつけ一直線に進み続けることが大事なのかもしれない。「ひっかかり」のストックだけは日常生活の中で行い続けることが大事なのかもしれない。

路上の視野〈1〉紙のライオン (文春文庫)

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