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さまざまな「金閣」

虚構と非虚構の文章について

 事実を事実として突きつけられた時、虚構には虚構としてそれをはねのける力がないように感じられるのは、なぜなのだろう。作品の完成度からいっても、細部の見事さからいっても、その二作ほどではないと思われる『金閣炎上』が、時がたつにつれて私の内部に確固たる世界を築いていくのは、なぜなのだろう。

 

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 本章で取り上げられている作品、「金閣寺」、「五番町夕霧楼」、「金閣炎上」を読まないと情景を理解できない章だった。

 この三作は、沢木耕太郎虚構と非虚構の文章について考える上で、手がかりになった作品と言っている。

 ノンフィクションを書き続ける彼にとって、フィクションとの優劣や違いは気になる題材だったのだろう。

 彼は自分の内部に残り続けるものはノンフィクションの文章だと言っている。決して、ノンフィクションの方が絶対に優れているとは書かれていないが、フィクションよりノンフィクションのほうが優れていると考えていたのではないだろうか。

路上の視野〈1〉紙のライオン (文春文庫)

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